楽天市場の3,980円以上一律送料無料問題を読み解く

公正取引委員会に楽天ユニオンに楽天友の会にコロナウィルスにと、揺れまくる楽天市場の3,980円以上送料無料問題

反対派の楽天ユニオンの声があがり、公取委は緊急停止命令を申請。賛同派の楽天友の会は賛成の立場ながらコロナウィルスを理由に延期を要請し、楽天市場は申請した店舗は延期できるよう方針転換。これが現状です。

私なんぞは影響を受ける一業界人ながら、流されるまま流れるしかない。不満の有無抜きに、そうした店舗さんがほとんどかと思います。

ただ、日々報じられる内容を見ていて思うのが、Amazonとも絡めて報じられる一部報道に、微妙な理解の違いがありそうな面。

その辺もふくめ、現状の私の理解と見解をまとめます。

このあとどこの馬とも知れぬ私が偉そうに語ることになりますが、本記事は顔も名前も出さない匿名のいち個人による見解です。

狭い理解のなかで現状を整理しただけで、別にどちらが正しいだとか一石を投じたいとか、深い意図はありません。

明らかに事実と異なる部分などございましたらご指摘いただけると助かります。可能な限り事実確認をし、必要であれば訂正させていただきます。逆にいえばその程度の理解で書いているので、話半分でお読みください。

どなたかにご不快の念をおかけしたり荒れるような事態を望んでいるわけではありませんので、場合によっては記事ごと消す可能性もあります。

本当はAmazonも楽天も選択制だった

実際のところをいえば、送料無料・送料別に関してはAmazonも楽天市場も選択制

そこへきて「 3,980円以上はすべて送料無料で統一します 」と言い出したものだから、楽天市場に出店中の店舗としては不満が噴出したわけです。

ちなみに、楽天市場送料無料問題で一部報道されていたのが下記

  • Amazonは2,000円以上で全て送料無料だが、FBAで送料がAmazon負担だから不満は出ていない。
  • 反面、楽天は送料がお店負担なのに送料無料(送料込み)を強制しているから出店者が怒ってる。

AmazonのFBAが送料無料で、アマゾン社負担なのは間違いありません(FBAがなにかは後述)。

ただ、結局FBAも注文一件ごとに手数料がかかります。これが実質、資材費やこん包費を含めた送料です。出品者よりアマゾン社へ支払います。

(この点、名目が違うだけなので、本件の問題を報道するにあたって「 FBAの送料はアマゾン社負担 」とするのは、問題の本質に迫るにおいて少々ズレがある)

ほか、そもそもAmazonに出店している店舗はFBAを使わず自社で受注・出荷することができます。なので、2,000円以上の商品注文でも送料無料でないこともあります。

そのときは送料無料にすれば店舗側が送料を負担することになります。もちろん送料を別としてお客様へ請求することも可能です。

FBAとは?

Amazon上に出店している店舗が、商品をAmazonの倉庫へ預けてそこから出荷させるシステム。倉庫に預けてある商品の注文が入ると、Amazonがお店に代わって出荷してくれるわけです。

FBAはフルフィルメントバイアマゾンの略。

その商品は基本的にアマゾン社本体が販売している商品と同様に扱われ、注文が入ると受注から商品出荷まですべてアマゾン社が代行してくれます。

アマゾン社が販売している商品と同じ扱いになりプライム会員なら送料も無料。店舗は注文ごとにFBA利用手数料(実質送料も)を支払います。

両方とも選択制だったのに

まず、Amazonも送料無料かどうかは選択制。FBAに預けてAmazonの物流システムに載せるもよし、自社から出すときに送料無料にするもよし、送料を別途お客様に請求するもよし。

そして、実は楽天市場にもRSLと呼ばれる、AmazonのFBAに近い出荷代行システムがあります。こちらも出店者側に手数料=送料が発生します。あくまでも出荷代行なので。

(RSL=楽天スーパーロジスティクス)

なので、楽天市場もRSLに預けて楽天の物流システムに載せるもよし、自社から出すときは送料無料にするもよし送料をお客様へ別途請求するもよしで選べていました。

つまり、Amazonも楽天市場も細かい部分を抜きにして、実質的にほぼ同じだった。

それを楽天市場が、3,980円以上は強制的にすべて送料無料と言い出したから、「 ちょっと待って、ついていけない! 」と声が上がったわけです。

楽天としてはわかりやすくしたい

楽天市場が3,980円をラインに送料を一律無料にする狙いは、実際に買い物をされるお客様にわかりやすくし、楽天市場で物を買うお客様を増やすところにあります。

かねてより楽天市場にはお客様からの不満として「 送料が店ごとに違っていてでわかりにくい、比較するのが大変 」との声があがっており、課題になっていました。

そこで、3,980円をラインに一律送料無料にして結局いくらなのかがわかりやすくしよう、ってわけです。

これで楽天市場がより利用しやすくなってお客様が増えれば、楽天市場全体も成長するし出店者にもメリットがある、というのが楽天市場のスタンスです。

スタートの違いがポイント

実質的にほぼ同じなAmazonと楽天市場ですが、実は両者のスタートが正反対だったこともポイントのひとつです。

Amazonは本来、アマゾン社自身のECサイトとしてスタートしています。当初は本屋さんで、ほかの企業は商品を出品していませんでした。

楽天は反対で当初の楽天自身は商品を売っていません。出店する店舗に楽天市場という場所とシステムを提供していたのです。

つまり、もともとAmazonはネット通販専門の本屋さんで、楽天市場はネット上の売り場を貸すモールでした。

解放したAmazonと締め付けた楽天

それがいつしか、Amazonは本以外にもいろいろな商品に手を扱うようになるとともに、他社の商品出品を認めていまに至る。。

ちなみにアマゾン社以外がAmazon上で販売する店舗をマーケットプレイスといいます。

楽天市場もただモールとして他社に場所を貸すだけでなく、楽天自身が商品を仕入れて売るようになりました。楽天24、楽天ブックス、楽天ファッションなどがそうです。

ほか、楽天市場で出店していた企業からお店を買収する形で楽天市場自身が運営しているショップもあります。

そうしてやってることが双方似てきた両者ですが、このスタートの差が出品者・出店者にとって大きな違いに。

前置きが長くなりましたが、このスタートの違いが今回不満が噴出した本質的な原因と私は考えています。

楽天は後出しで出展企業に競合した経緯となる?

本来は自社用のお店だったAmazonのシステムをほかの企業にも解放したアマゾン社と、もともと場所を貸してた大家だったはずが突然強大なライバルとして登場した楽天市場

この差はかなり大きいです。

多くの出品者にとって買いやすさ・探しやすさが魅力と評判の良かったAmazonのプラットフォームは魅力的です。さらにはFBAやマーケットプレイスプライムなど、条件さえ整えばアマゾン社が扱い商品と同じくPrimeマークもつけられるように。

それを解放してくれたのだから、メリットを感じた企業はこぞって自社の商品を出品しました。出品している企業にとってはもともと販売していたアマゾン社も強大なライバルですが、もとより承知のうえで出店しているのだから不満はあっても割り切っています。

(これは商品を一気に増やしたかったAmazonの思惑あってのことでしたが、それは置いといて)

反面、楽天市場はもともと場所を貸すモールです。ポイントや店舗構築の自由度などAmazonになかった魅力で多くの企業の心をつかみ、たくさんの店舗が出店しています。

そこへ、楽天自身が商品を仕入れて販売を開始します。先述した楽天24、楽天ブックス、楽天ファッションなど。

これ、楽天市場にお金を払って出店している企業からすれば「 ふざけんな 」の想いです。日本を代表する企業のひとつにまで成長した巨大資本の楽天市場が、突然ライバルになるわけですから。

楽天と商品が被らなければ被害はないですが、ほかにもさまざまな規約や制度などが始まり、出展料や手数料体系も変わってきました。楽天市場へ支払う手数料は実質的な値上げで、徐々に楽天への出店コストも上がってきています。

トドメが3,980送料無料問題

そして、トドメになったのが3,980円以上送料無料強制プラン

一応、送料があまりに高くなる家電や家具など大型商品と酒税法の関わりで酒類の店舗は免除されいます。

が、これだけ大きな変化を企業・店舗の商材や売上・利益率などの都合にかかわらず一律で強制し、楽天市場側は特にこれといった負担もなく、送料は店舗負担。

楽天側としては「 楽天全体の成長のため 」と言いますが、楽天の成長のために負担を強いられるのは店舗じゃないか、と不満に思わないわけはありませんね。

実はAmazonも似た感じで公取委の調査を受けた

ちなみに、公正取引委員会の調査が入ったのはなにも楽天市場だけではありません。

実は2019年、アマゾン社もポイント制度の導入をめぐって独占禁止法における優越的地位の濫用を理由に、公正取引委員会の調査が入っています。

送料とポイントという違いはありますが、ある意味、今回の3,980円送料無料と似た構図です。

当時、Amazonではアマゾン社だけでなく、マーケットプレイスに出品している他企業の商品も含めてすべて、最低でも1%のポイントをつけて買い物をしたお客様へ還元することを決めました。

長らくポイントを強みに成長してきた楽天市場への対抗策としてもでしょうけども、このころ、Yahoo!ショッピングもTポイントやPayPayによる攻勢もあってのことと思われます。

このときAmazonで買い物すると付与される1%のポイントは、商品を販売したお店が支払う形となります。

アマゾン社が扱う商品であればアマゾン社がお客様へポイントをつける。Amazon上でA社が出品している商品が売れたら、その売上から1%分のポイントをつける。この商品はポイント10%とかお店が独自に高くつけることもできますが、最低でも1%は強制。

つまり、お店としては最低1%分の利益が減ることに。細かい部分は省いてきましたが、基本的に出店料の月額が安い代わりに販売手数料が高く設定されているAmazonにおいて、1%といえども決して安いものではありません。

これに関しては、最終的にアマゾン社が折れます。1%ポイント付与は強制ではなくなり、ポイントをつけたい出品者だけがつけたい分だけつける選択制で落ち着きました。

現状と反対派・賛成派

いま現在、楽天市場としては3,980円以上送料無料プランは撤回せずやり遂げる方針。ただ、3月16日スタート予定だったのが、コロナウィルス流行の影響を鑑みて延期。

店舗側で申請すれば、従来通り自由に送料を決められる状況です(ただ、申請しないと予定通り3,980円以上送料無料になるっぽい?)。

現在、おもに反対する組織としては楽天市場に出店中の店舗から組織される楽天ユニオン。

反対だとか組織だとかってレベルで語っていいかは微妙ですが、行政機関である公正取引委員会は3,980円以上送料無料プランを差し止めるべく地裁へ緊急停止命令の申し立て中。

対して、3,980円以上送料無料プランに賛成で、反対派の意見ばかりでは楽天全体の印象が悪くなるだけだ、と旗を揚げたのが楽天友の会(略称RIST)。

ただ、楽天友の会としても現状で強行することはよしとせず、コロナウィルスのこともあるし延期しませんか、と楽天市場側へ働きかけました。

ちなみに楽天友の会としては楽天ユニオンや公正取引委員会への対抗組織ではなく、今後も含め楽天市場をよりよくしていこう、という組織のようです。

(特に楽天友の会はまだ発足したばかりでこれが正確な表現かは怪しいので、理念などはご自身でお調べいただけると幸いです)

かなり大手の店舗が多く含まれているように思います。

良し悪しとかじゃなく、利害関係の問題

私として楽天市場もは楽天ユニオンも楽天友の会もそれぞれのいい分に理があって、簡単によしあしといえないと考えています。結局はそれぞれの立場上での利害関係の問題ではないかと。

楽天市場としては、自身の弱点である送料体系のわかりにくさを解消し、より多くのお客様に支持されたい。もちろん自社の利益のためでもありますが、これが最終的に利用されるお客様のためになる。お客様のために動けば利用者が増え、全体的にみれば店舗にも利益が出る。理にはかなっており、もっと評価されてもいいと思います。

また、受け入れられず退店する店舗には途中退店による残り分の出店料を返金するなど、本来規約上認められていない措置も行うと表明。雑ないい方をすれば「 うちでやるからにはうちに従ってもらう、イヤなら出ればいいじゃない 」という強硬な姿勢の表れでもありますが、正論ではあります。

反面、これまでの楽天市場側の規約やルール変更なども含め、不満を持つ店舗が集まって声をあげたのが楽天ユニオン。特に送料無料プランに関して現実的に退店も難しく、かといって新体制への移行には負担が大きいとして、現状維持を求めています。

一方、このままでは楽天市場全体の評判が悪くなるばかりと危機感を覚え、送料無料プラン肯定派・賛成派の店舗が組織したのが楽天友の会

必ずしも楽天ユニオンに対立するための組織でもなく、かといって楽天市場に賛同一辺倒でもなく、送料無料プランについては賛成ながらコロナウィルスを理由に延期を求めました。

他方では、行政機関である公正取引委員会も「 楽天が強権的に振る舞っているのであれば看過はできぬ 」とスピーディーかつ大胆にお仕事中

結局つきつめれば、「 現状の楽天市場で利益が享受できる 」店舗と、「 変化による負担が少なく利益の方が期待できる 」店舗や楽天市場自身の利害関係を巡って起こっている論争ではないでしょうか。

実際、賛成派の楽天友の会は送料無料ライン適用外の酒類関係の店舗、もともと主力商品や全商品が送料無料な店舗などが目立つように見受けられます。

反対に楽天ユニオン側としては、送料無料により負担が出ることは確実。それで新たな利益を享受できるかは不透明。だから反対、ってわけです。また、こういった施策を一方的に実行する楽天市場への不満もあって声をあげているのでしょう。

これらによしあしをつけることはできません。不利益より利益の方が大きいから推進したり賛成して悪いわけはない。不利益が多いから反対するのも当然。それぞれ自身の立場に立って主張することを軽々と間違いと断ずることはできないでしょう。

ただ、法的に問題があれば是正されるべきですし、グレーで白か黒かの判断の必要があればしかるべき行政機関が動くのも道理。

そこで公正取引委員会が動き、地裁へ緊急停止命令を申請中。そうして状況がうごめいているのが現状、というのが私は理解です。

(結果的にどうであれ、楽天友の会は必ずしも楽天ユニオンに対立するための組織ではない表明していますので、そこは誤解なきよう)

まとめ:楽天市場の3,980送料無料問題を読み解く

言いたいことがうまくまとまらず、テーマも二転三転し長くなってしまいましたが、もはや軌道修正したり細かい部分を推敲する気力がありません。

私は自身が書いた文章をあまり長い時間読み直すと恥のあまり爆死したくなる呪いにかかっているので。

繰り返しますが、あくまでも私個人の理解・見解としてお受け取りください。また、明らかに事実と異なる部分などございましたらご指摘いただけると助かります。

※どなたかにご不快の念をおかけしたり荒れるような事態を望んでいるわけではありませんので、場合によっては記事ごと消す可能性もあります。